17世紀とは?

日仏演劇協会の総会があって、それにあわせて「フランス17世紀演劇事典」という記念碑的な出版を行った研究者の方々のお話しを聞くシンポジウムがあった。まず、これが40年に及ぶ共同研究の成果だということに、感動を覚える。
西洋演劇の歴史にとって17世紀のフランスはきわめて大事である。劇場ができ、作劇法の規範が固まったのがこの世紀だからだ。いわゆる「古典主義」の時代である。けれどもこの事典の最大の眼目は17世紀を「古典主義」のフレームから解き放ち、多様な傾向の演劇が花開いていた時代として再認識させてくれることだろう。
喜劇はスペイン・コミックの影響下に移入された。オペラはイタリアからの影響で発達した。俳優の身体技法はイタリアの影響にあった。そういう影響を受けながら、コルネイユラシーヌモリエールといういわゆる三大劇作家がフランス独自の「ことばの劇」を完成させたことに間違いはない。
そういう特権的な時代であることを認めつつも、私が知りたいのはこの時代のヨーロッパ全体の芸術ジャンルの関係だから、そこがちょっと物足りない。たとえば、ギリシア悲劇の真の後継者たらんとしたのは、古典悲劇なのではなく、オペラだったのではないかと思う。そのオペラから派生して「ことば」が自立して悲劇を支ええたもの、それが古典悲劇なのではないかと思う。どうなのだろうか?

フランス17世紀演劇事典

フランス17世紀演劇事典