インジェニュイティ

 ぬらぬらとした不思議な感触であった。見た目よりも思いどっしりしたペンの重量を右手の指先に感じながら、どう見ても万年筆にしか見えないその筆記具ではあるが、しかしそのペン先は紙に触れてはいない。そして紙の上を滑っていくのは、ペン先の裏側から昆虫の触覚のように伸びている、先が丸い針のようなものであった。第五世代の筆記具という新機軸、パーカーが開発した「インジェニュイティ」というペンを文具店で試し書きさせてもらったのだ。
 最近、万年筆を買い換えたばかりでなかったら、けっして安いとはいえないこの筆記具を買っていたかもしれない。出版社が万年筆に向いた紙質で原稿用紙を作らなくなって以来、けっこうざらざらしている普通のコピー用紙を原稿用紙にしている私には、万年筆よりもさらに柔らかいタッチで書けるペンが欲しくないと言えばウソなのだ。
 しばらくは、ペンを買おうか買うまいか、悩む日々が続く。が、これを買うなら万年筆向きの上質紙を大量購入したほうが賢いかもしれないなあ、などとも考えつつ。
参考HP http://www.gizmodo.jp/2011/10/parker_5th_pen.html