新しい発想で・・・

 おひさしぶりです。伊豆から帰ってきて今日まで、新しく書くフランス語の参考書の構成案を作るためにうんうん、唸っておりました。編集者が長期休暇に入るので、それに合わせて私も構成案を仕上げなければならず、苦闘しておりました。第1案はボツ、第2案はだいたいよし、方向性を修正して再び全体を練り直し、ようやく第3案でとりあえず決着しました。これでも全体の3分の1なので、全体から言えばちっとも進んでやしないんですが、なにしろ今までの入門書とは発想がまるで違う「鬼っ子」なので難産なんです。
 出版社にとっては企業秘密に属することでしょうから詳細を明らかにするわけにはいきませんが、この本が誕生するに至った動機くらいなら少し書きましょう。
 そもそもフランス語の文法を初歩から学ぶとき、決まって次のようなプロセスを踏むのです。まず名詞周りのことを学びます。動詞はêtre, avoir,規則動詞というふうに学んで、それから次々と不規則動詞の活用が押し寄せてくるという按配です。で、複合過去が出てくる頃がほぼ中間点。そして後半は複雑な時制やら法の嵐、嵐・・・。で、だいたい中盤でみんな挫折するわけです。
 ところで、こういう順番に文法を配列したのは今から2500年ほど前、アリストテレスがやったんだそうです。しかし哲人には哲人の理屈があっても、今時の外国語学習者のニーズにそれが果たして適っているのかどうか、私はホントにずーっと疑問だったのです。un livre, une table...どうしてここから始めなくてはいけないの?
 一方、会話(コミュニケーション)型の外国語学習というのももちろんあって、これはいきなり自分の名前を言ったりするわけですね。これは実用的なんですが、でも最大の欠陥はことばのしくみが分からないまま進んじゃうことです。機能から生成へと向かわないわけです。
 ですからこのいずれもを白紙に戻してみたいと思っていたのです。で、あれこれ構想を練るうちに出版社のほうでフランス語だけじゃなくていろんな外国語の入門プロセスを再構築する企画を出してくれたので、それにのっかる形で作業が始まりました。一応ヨーロッパ諸語は共通的な構成を立てたいということで、私の初期プランとはずいぶん違う形なのですが、それでもまとまりました。
 基本的には、手っ取り早く「全体」の認識に達して、そこから細部へと下りてくるというスタイルになりました。
 この夏に3分の1を執筆して、年内に脱稿。年明けから校正に入って刊行が来年3月の予定です。乞うご期待!