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01-004 女性とズボン

 男性がはく下着の「パンツ」、女性がはくズボンの「パンツ」。彼氏とカレシの要領でアクセントに差があるようで、彼氏型が前者、カレシ型が後者だそうだが、字で書くとまぎらわしい。

 フランスには女性がパンツを着用することを禁じる法律があったそうで、今月のはじめに大臣がこの法律の廃止を宣言するーもちろんパンツ姿の女性大臣がーまでは生きていた法律だった。もちろん実際に違反者が逮捕されたことはない。フランスの国会では女性議員がズボンをはいて登院することが認められたのは1980年になってからのことだ。

 フランスの服装史をひもとくと、古代のガリアでは男は「ブレ」というたっぷりしたズボンをはいていた。一方ローマ人はトーガを身にまとい、ズボンを蛮族の風習とみなしていた。中世にはいると騎馬を尊ぶ貴族の支配がやってくる。トーガでは馬に乗れないので男性はズボンが正装となる。キュロット型の半ズボンから、しだいに膝上あたりまでを覆うオ・ドゥ・ショスへと変遷してきた。これに対して長ズボン型の服装は農民や職人の服装とされた。ここからフランス革命のときに市民階級のことをサン・キュロット(キュロットをはかない)と呼ぶようになった。今日でも男性がズボンをはくのはこの影響なのであって、男性の服装がブルジョワ服に標準化されたことによる。

 一方パンタロンというのはイタリア喜劇(コンメディア・デラルテ)の登場人物であるパンタローネがはいていたベネチア風の長ズボンのことをさした。ことばの上ではフランス語で「ズボン」は男女ともパンタロンを用いる。パンタロンは日本語ではかつて流行もしたラッパ型のズボンのことなので、この語が使えたら便利なのに、とわたしはいつも嘆いている。

 さて女性にパンタロンの着用が禁止されたのもフランス革命期である。ファミニストはブルジョワ革命の権力交替のプロセスから「女性」が排除されていく様子が如実に服装史に表れていると説く。服装とジェンダーの区別がはっきりするのもこの時期なのだそうだ。

 20世紀に入ってから、とりわけその後半期に、服装による性差の壁は崩壊する。ジーンズにTシャツという服装がその典型だろう。それにしても古い法律が残っているものである。