歌で覚えるフランス語 5

日本にも来たことがあるコラ・ヴォケールが亡くなったので、追悼の意をこめて代表曲のひとつでしょう、映画『かくも長き不在』の挿入歌「3つの小さな音符」を紹介します。
行に番号をふったのはきちんとした韻をふんで詩が作られていることを確認してもらいたいからです。①-②でふんで、③−⑥で外側の韻、中に④-⑤の韻があることを行末を見てお分かりください。
Trois petites notes de musique ①
3つの小さな音符、これは映画のストーリーである、記憶を失った夫の記憶を取り戻そうとする妻の話と重ねられています。この音符が「記憶」の喩でもあります。
Ont plié boutique       ②
1行目が主語で、plier boutiqueというのは慣用句で「店をたたむ」です。「もう忘れた」という意味でしょう
Au creux du souvenir     ③
思い出の穴のなかに、です。
C'en est fini de leur tapage   ④
c’en est fini de...も熟語で「〜が終わった」です。音を立てることをやめてしまったのです。
Elles tournent la page     ⑤
そして、ページをめくってしまったのです。
Et vont s'endormir      ⑥
眠りにつこうとしているのです。
Mais un jour sans crier gare
しかし、ある日、sans crier gare「いきなり」、
Elles vous reviennent en mémoire
記憶によみがえってくる、のです。このvousは「自分」のことでしょうね。相手のことは次節でのようにtuで呼んでいます。

Toi, tu voulais oublier
で、相手に呼びかけて、あなたは忘れようとしていた
Un p'tit air galvaudé
あとは目的語です。つまらない歌の一節を
Dans les rues de l'été
夏の路での
全体は、忘れてもいいよ、という意味なんでしょうね。
でも・・・、と逆接していきます。
Toi, tu n'oublieras jamais
この未来形は命令です、あなた、忘れないでね
Une rue, un été
あの路と、あの夏と
Une fille qui fredonnait
その歌を口ずさんでいた女性を、です。
それが「私」なんでしょうね。