3本のテレビドラマ

 そんなに暇でもないんだけど、油断も隙もあったもんじゃない、7月からテレビドラマ3本に「はまって」しまった。録画しておいて見ることが多いのだが、3本とも初回から欠かさずに見ている。
 向田邦子の原作『胡桃の部屋』(NHK)はいかにもこの作家らしい、人間のかかえた孤独と、平穏な家庭生活の断層をえぐるドラマだ。ソツがないキャストがそろっているのも魅力だが、ダントツに見ごたえある蟹江敬三の「せりふ不要」の目の演技にやられてしまった!
 そして、これはひょっとしたら近年のテレビドラマの最高傑作なのではないかと思っているのが『それでも、生きてゆく』(フジ)だ。よくぞこれだけのキャストを集めたものだ。一概に言うところの「リアリズム演技」の、現在の日本における到達点だと思ってよい。本当に、真面目にそう思っている。私が言うと挑発の度が過ぎるかもしれないが、テレビでここまで「演技」を見せられると、もうどんな舞台もかなわない。でも、大竹、柄本、やっぱり突き抜けた凄さを秘めている俳優は演劇人だ。15年前の少女殺人事件の加害者家族と、被害者家族の心の傷が、瑛太演じる青年と満島ひかり演じる少女の交際を通してだんだん癒えていくストーリー。
 もう一本、オマケなのだが、シュール&ナンセンスなコミックの原作をそのまま「実写版?」にしてしまった、まさかの企画『荒川アンダーザブリッジ』(TBS)も見ている。先の2本と比べて芸術性は劣る、っていうか「ない!」が、河童とか星とか、ヘンなキャラを人間が演じているおかしさは捨てがたい。原作のほうが面白いかもしれないが、ここから原作へと進んでも。ちなみに原作者は、かの傑作『聖☆おにいさん』(イエスとブッダが一緒にアパートに住んでる!)の中村光
 3本とも、視聴率は悪い。ハハッ! 良いものはそういうもんです!