天下りのススメ

 消費税が再来年から8%、さらにその翌年からは10%になる法案が衆議院で可決された。首相も野党の党首も、敵味方みたいなふりをしているが、どちらもつまるところ財務省の男妾だから、お互いを骨抜きにして手を組むのは朝飯前だ。
 国会も政党もジャーナリズムも企業も学校も、もう何もかもが空洞化し、官僚だけが自己保存本能を発揮して肥大化する。
 日本という国は、そもそも儒教の上に科学文明だけを乗せた奇形国家だから、維新の昔からだいたい無定見だったのだが、それでも唯一の救いだったのは洋行した官僚が優秀だったことで、それで何とか国の舵取りをやってきた。その官僚も天下りができなくては力が発揮できない。
 国家公務員のキャリア組には「後輩は先輩に命令しない」という掟がある。つまり先輩を抜いて出世したら、抜かれ組は「野へ下る」のだ。これが天下りである。これがあるおかげで役人の世界は比較的若くて有能である。一向に世代交代しない国会議員の無能な爺さまたちと比べてみるがいい。ただ問題なのは官僚が天下った先でコロコロ転がって、毎年のように転職し続け、そのたびに何千万円もの「退職金」をもらうという実態だ。
 要はこの甘い汁だけ吸えなくすればいいのだ、と私は思う。だから「国家公務員の退職後の給与管理法」というのがあったらいい。本庁をやめる時に生涯一回だけ退職金を支給すること。天下り先の給与を公開して民間による審査委員会がこれを監督すること。退職後の職務の兼任を禁止すること。つまりフツーの給料で、どっかで65歳くらいまで働いていただければよい、というだけの話である。給料さえ安かったら、ワケのわからない団体がたくさんあったって、そう目くじらをたてる話ではない。
 これだけ守っていただければ、役人さんにはどんどん天下っていただいて、官僚を若返らせてもらいたい。
 え、そんなことしたら誰も天下りしないって?じゃあ、法律の名前を「天下り禁止法」にしたらいい。