DVD 「サボテンの花」

DVD「サボテンの花」
なんでまた急にこいういうシロモノを見たのかというと、フランスのSACDから来た資料にあった、ドイツで「サボテンの花」をやります、という一文にフト、目が行ったわけなのである。正確には作者のグレディ&バリエの名前とセット。つけ加えれば、エッ、ドイツでフランスコメディなんかやるの?という驚きもあったことも隠せない。

だいたいフランスの商業演劇系の作家には、日本での知名度が高くない人が多いがコメディの翻訳にもかかわる身としては、グレディ&バリエ(藤子不二雄みたいにコンビ作家だ)は、NLTが近年上演した『ペン』の作家としてこちらの頭には刻まれている。そして『ペン』をやったときにベテランの役者さんが、この作者の「サボテンの花」をやりたいと言っていたのを思い出した。

「サボテンの花」はアメリカで映画化された。それを見て、その役者さんは興味を持っていたのだ。何事にもタイミングというものがある。これは今だ!とDVDを入手した。

二枚目で独身中年の歯医者がいるが、彼は自分には妻子がいると偽って、恋人の若い女性と結婚せずにつき合い続けようとしている。ところが女性が自殺を図ったことから、とうとう医者は女性との結婚を考える。
すると女性は、奥さんと会わせてくれと言い出すのだ。しかたなく医者は長年世話をしてくれる堅物の熟年看護師を「妻役」にして芝居をするのだが、話の成り行きから看護師にも恋人を作らなければならなくなって、今度は患者を看護師の恋人にしてクラブで遊ぶ。で、こういう芝居をしているうちにどんどん嘘がふくれあがっていくわ、看護師には遅ればせの青春がやってくるわで。状況は一挙に破局へと向かっていく。そして、医者は女性にもふられてしまい、そして、ふと気づけは長年そばにいた看護師との愛に気がつく、というお話。

とてもよくできた話で面白い。ただ、前半から中盤の軸である「なりすましのコメディ」から、後半の軸である看護師の「遅まきの恋」への主題の交錯をどううまく処理するかが、演出の腕だ。

ともかく、シリアスな水面にさざなみが立ち続け、気づけばいつの間にか爆笑の嵐になっている展開は見事!

サブタイトルも決まった。「サボテンの花 ‐遅咲きの恋の命は長かりき!」

原作を入手していずれ翻訳したい。