0007「武器としての笑い」

 今では絶版であるが劇作家の飯沢匡が書いた岩波新書を古書で探し出して読んでみた。傑作だという評価と、まったくくだらないという評価がある書物だが、読んでみたら両方とも当たっている。日本人が儒教による抑圧で「笑い」の文化を軽んじているという説が中心となっている。それはそれで的を得ているのだが、著者が江戸期以来の落語の伝統に一切ふれていないのは納得がいかない。
 著者が深く関わったNHKの「日曜娯楽版」や「アサヒグラフ」の風刺的台本や記事も、今読むとちっとも面白いものではない。ただし作家の「文体模写」だけはすさまじい力があるが・・・
 ともかく、日本の近代劇(新劇)にはじめて喜劇をもたらした飯沢匡が笑いにいかなる考えを持っていたのかを確認するためには読むべき本だろう。そこから井上、三谷へと喜劇は流れてくるのだが・・・知的なシャープさはどんどん物足りなくなってきている。

武器としての笑い (岩波新書)

武器としての笑い (岩波新書)