0006 ゴルギアス

 プラトンの対話篇のなかでひときわ現在の社会政治状況のなかに投げ込まれるべきなのは「ゴルギアス」だろう。この中でソクラテスは「力」と「善」、「快楽」と「善」を峻別することによって力や快楽の原理にしたがう政治を戒める。その通り、と思うが凡夫のワタシとしちゃあ、咳払いのひとつやふたつしたくなる。分かってますよ、ソクラテスが言うよう「欲望は穴の開いた甕」。水を汲めども汲めども空になる。が、自分のことは棚に上げときますね。市場原理と軍事はともに「力」だし、「快楽」とはマスメディアとポピュリズムにほかならないと考えると、今の世界にはこの「善」に相当するものがないというところが問題なんだろうと思う。ほっとくと儒教的な古層が復活するのでそこは警戒。 
 ソクラテス曰く「では、もしひとが、知性を欠きながら、自分に一番よいと思われることは何でもしている場合、それを善いことだと君は思うかね」
 この知性は学校では学べない。

ゴルギアス (岩波文庫)

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