0002 やげん掘

 連れ合いが東京で半世紀近く暮らしているのに、浅草の観音さまのなかに入ったことがない、と衝撃的な告白を暮れにした。観音さまのなか、というのはつまり、お参りすることはおろか、雷門を道から見たことはあっても、くぐって仲見世すら歩いたことがないという意味だった。それはいけないというので正月にものすごい人ごみを覚悟で浅草寺に参詣してきた。その雑踏は筆舌に尽くしがたいので書かない。ただ、浅草に行ったわけはもうひとつ、やげん掘の七味唐辛子を浅草店で「オリジナルブレンド」してもらって買うという目的があったのだ。これも最近病みつきになって食卓に欠かせない。すっかりファンになってしまった。で、ファンになると気になるのは「やげん掘」というのは、もとは日本橋にある地名だが、この老舗の屋号にして商品名である。が、よく蕎麦屋のテーブルにのっている唐がらしの小さな缶(赤い本体に黒い蓋)、あそこにも「やげん掘」と書いてあるが、あれは七味ではなく、一味唐辛子であることが多い。蕎麦屋さんのための「やげん掘」の一味なのか、それとも最初はそうだったが、あとはどこのか分からないまま唐辛子を入れているのか、そのへんをはっきりさせてもらいたい、と思った。
やげん堀オフィシャルサイト http://yagenbori.jp/store/index.html