9.11と3.11のメモリアルの日に放談!

とんぼ氏:10年前だね、NY同時多発テロ
メガネ君:ああ、あの頃のことで覚えてることがあるかい?
と:ああ、翌日、フランス語を教えに行っていた高校で延々とユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の歴史的な成立を話し、さらにはイスラームとアメリカ社会との関係を解説したことをよく覚えている。それから、ちょうどフランスの太陽劇団が来日していて、アリアーヌ・ムヌシュキンが日仏学院で講演会をやったんだけど、彼女、ショック状態で何も話せなかったのを覚えているよ。
メ:今日は3.11からもちょうど半年。デモに行くんじゃなかったのかい?
と:ああ、グリーンピース系の主宰するエネルギーシフト・パレードに参加する予定だったんだが、この炎天下に2時間も歩いたら明日以降の予定に支障が出ることを懸念して、やめた。無理したくない年齢になったんだよ。体力戦は若者に任せたいんだけどね。各地の「脱原発イベント」を生中継している岩上安身のUstreamを見ながら、得意の言論戦で代わりに参加するよ。
メ:しかし、デモのほうにも若者はいないじゃないか!
と:そんなことはない。小さい子どもがいるお母さん世代はずいぶん増えたと思うよ。岩上さんが言ってるが、「日本には従順な人間ばかりいるわけではないんだ。もっと複雑な人がいるんだ」ということを示威する必要はある。この考え方は共鳴できるんだな。「反対!!」という単純なことのためではなく、「いろいろなんだ!」と叫ぼうというのは大賛成だ。
メ:で、どう「いろいろ」なんだ?
と:まずは福島の現在の話からだな。「国に従順でなければ補償が得られない」というメンタリティーが支配的になっているらしい。
メ:それこそ政府とメディアが一体となって進めている、統治のテクニックじゃないか。
と:ああ、放射能測定結果は意図的に過少報告されているらしい。電力会社の下請けが地上2mのところで計ってるだけだっていうじゃないか。個人や外国の団体が測定すると、すごく高い数値が出るのに、そういうものは非公式だと一蹴されてしまうそうだ。で、御用学者ばかりが連れてこられて「健康に影響ない」と繰り返すばかり。
メ:よその国のことは批判できないな。東アジア的社会ってことか。
と:それでも、市民活動家が精力的に「嘘をつかない」学者を呼んで講演をさせたりして、徐々に意識を高めているようだ。御用学者は福島県民をモルモットにすることしか考えてない!ということだ。
メ:福島全域を避難地域にしろってことか?
と:政策としてできることと、できないことがあるような気がするんだ。政策として一律にできることはそれとしてやる。でも、実際には原発だけでなく、地震や津波も含めて、今までの生活が出来なくなった人々といっても、個々の家庭事情が違うんだから、そこを個別にカヴァーする支援の手がほしいんだな。核家族、大家族(これが多い地域だな)、年寄りがいるかいないか、というか、生計をどういう職業でたてていたかで、避難したくても避難できないとか、避難したけど戻りたいとか、いろんな事情で全国に家族が離散しちゃったとか、さまざまなんだ。そういう話を聞くと胸につまされるな。被災補償金いくらです!って単純な話じゃないんだよ。
メ:なるほどね。ところで、岩上さんが力説しているのは、原発問題というのは根本的にはなぜあそこに原発というものができたのか、という問題を考えろということだね。
と:そうだ。
メ:広島、長崎と今度の福島との間に、1954年にビキニ諸島での第5福竜丸の被爆があって、原水禁運動が主婦の間から起こり、国民のかなりが署名する運動に発展する。これを禁圧するためにアメリカが正力松太郎と手を結んで「原子力は安全」キャンペーンを行い、同時に翌55年に保守合同させて「自民党」を作る。で、それが今から2年前の民主党政権誕生までおおむね続く体制になるんだ。
と:原発というのは、まぎれもなくその構造の中で推進されて、そこにあるんだ。そして、今でも官僚とメディア、岩上さんいわく「匿名で権力を行使できる二大悪」は結託して、その構造の温存をはかっている。昨日の鉢呂大臣の辞任記者会見はすごかったぞ。
メ:どう「すごかった」んだ?
と:「死の町」という発言が「県民の感情を傷つけた」とメディアがぶちあげたのがまず最初だ。この半年、じつはああいう表現を使ったメディアはたくさんあったし、何も問題なかったんだ。ただ官僚的には、それは言ってはいけないことだった。福島県民からは多くの意見が寄せられているというではないか、死の町ならそう言ってくれてかまわん、と。それから、視察から帰ってきて記者を相手に「放射能がついちゃうぞ」と言ったとか言わないとか・・・あれは言ったにしても戯言だろ。針小棒大に取り立てて報じるようなことではない。じっさい、事実としてそういうことがあったのかどうかも分からないままだ。新聞記者に刺されたとしか思えない。
メ:あの大臣はTPPにも慎重、原発再開にも慎重だったんだろ。
と:まさに。経済産業省とアメリカの国益に逆らう大臣は抹殺されるんだよ。ハハッ、まさかとは思うがね(笑)。しかし、最近のマスメディアの揚げ足取り、というか、失言つるし上げ主義というか。異常だな。昨日の辞任記者会見で質問したM新聞の記者の態度はすごかったな。まるで大臣を極悪犯みたいにあつかってるんだ。乱暴なことばづかいで糾弾してるんだ。あれを見せられたら、私は新聞記事を一切、健全なジャーナリズムの産物だとは思えなくなる。