Studio Théâtre から 2011,09.02

まずは私も翻訳した作品がある、ミシェル・ヴィナヴェールさんが登場しています。お元気そうな声を聞けて嬉しいです。『2001年9月11日』の再演がパリ市立劇場ほかで行われるので、その紹介です。テクストにおける音楽性や声の重要性について話をしています。この作品の日本語翻訳は出版されています。「コレクションフランス語圏演劇」(れんが書房新社)の第2巻です。あの同時多発テロに遭遇した人々によって残されたさまざまな声(録音)のコラージュによる作品です。ヴィナヴェールは出来事を「フィクション化」することにラディカルな疑問を抱いています。「芸術家はなぜ現実を再現しようとするのか?」
演出はアルノー・ムニエです。ヴィナヴェール&ムニエは、平田オリザが脚色した『鳥の飛ぶ高さ』の原作者と演出家というコンビですね。(2人の対談は拙訳により平田作品と抱き合わせで出版予定です)。今回の公演は高校生たちを集めて、そこにプロの俳優を混ぜての上演です。 

ヴァリエテ座で上演されるロナルド・ハーウッドの2008年の作品『コラボラシオン』が話題になっています。舞台作品では『ドレッサー』、映画脚本では『戦場のピアニスト』で有名な英国系の作家です。『コラボラシオン』は、ナチス賛美に近いリヒャルト・シュトラウスと、ユダヤ人作家ステファン・ツヴァイクの友情が悲劇に変わるさまを劇にしたものです。日本では加藤健一事務所が2011年のはじめに鵜山仁の演出で上演しています。その公演関係のサイトに詳しい解説もありますから譲ります。

最後の話題はアヴィニョン演劇祭で評判だった舞台です。ジャン=クリストフ・バイイ(哲学者で詩人で美術評論家で・・、『遠くの都市』という本は日本語訳があります)が「自然」について書いた哲学的省察をテクストに、それをダンスのように運動量の多い身体パフォーマンスにのせて2人の俳優が「語る」という、ちょっと変わったものですが、動画を見てください。けっこう笑えます。